述クサタナ国の鼠王同様ヒミズを神とし祈って大敵を破った(ローリンソンの『ヘロドトス』二巻一八九章)。これは英国でシュリウ・マウスと称え、俗に鼠と心得、支那で地鼠、本邦でノラネまたジネズミ、日光を見れば死すとてヒミズと呼び、鼠に似た物だがその実全く鼠と別類だ。コンゴ国には鼠を神林の王とし、バガンダ人は、ムカサ神がキャバグ王のその祠堂を滅せしを怒り、群鼠をして王の諸妃を噛み殺させた話を伝う(一九〇六年板、デンネットの『黒人の心裏』一五三頁。一九一一年板ロスコーの『バガンダ人』二二四頁)。日本にも三善為康《みよしのためやす》の『拾遺往生伝』中に、浄蔵大法師を謗《そし》った者その日より一切の物を鼠に食わる。本尊夢の告げに予《かね》てより薬師の十二神将が浄蔵を護る、その日の宿直が子の神だったから鼠害を受くるのだと。子の日の神将名は毘羯羅《びから》、これは毘沙門や大黒と別口の神で、中央アジアで支那の十二支をインド出の十二神に配して拵えたものと見える。
 かく鼠が神の使となって人を苦しむるよりこれを静めんとて禁厭《まじない》を行うたり、甚だしきは神と斎《いつ》き祈った例もある。クルックの『北印度の俗
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