。アイテルの『梵漢語彙』一九三頁)。これに反しインド以北では大いに持囃して福神毘沙門と敬仰さる。ヒンズー教仏教ともにこの神を北方の守護神とし、支那には古く子《ね》は北方でその獣は鼠としたるに融合して、インド以北の国で始めて鼠をクベラすなわち毘沙門の使い物としたのだ。山岡俊明等このインド以北の支那学説とインド本土の経説の混淆《こんこう》地で作られた大乗諸経に見ゆるからとて、支那の十二支はインドから伝うなどいうも、インドに本《もと》五行の十二支のという事も、鼠を北方の獣とする事も、毘沙門の使とする事もない(『人類学雑誌』三四巻八号、拙文「四神と十二獣について」参看)。されば石橋君が聞き及んだクベラ像はインドの物でなくて、多少支那文化が及びいた中央アジア辺の物だろう。中央アジアに多少これを証すべき伝説なきにあらず。十二年前「猫一疋から大富となった話」に書いた通り、『西域記』十二にクサタナ国(今のコーテン)王は毘沙門天の後胤《こういん》という。昔|匈奴《きょうど》この国に寇《こう》した時、王、金銀異色の大鼠を祭ると、敵兵の鞍から甲冑から弓絃《ゆづる》まで、紐《ひも》や糸をことごとく鼠群が噛み断
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