せし人の筆録を引いていわく、この蛇岩窟に棲み、一週に一度出て、信徒が献じた山羊児や鶏を啖《くら》い、さて堀に入りて水を飲み、泥中に転び廻りついに窟に返る。その泥上に印した跡より推さば、この蛇身長に比して非常に太く径二フィートを過ぐと。これら諸記に依って測るに、東西両世界とも時にある種の蛇が特異の病に罹り、全体奇態に太り過ぎるのでなかろうか。早川孝太郎氏説に、三河で蛇が首を擡《もた》げたところを撃たば飛び去る。それを捜し殺し置かぬと、ツトまたツトッコてふ頭ばかりの蛇となる。その形槌に類する故、槌蛇と呼んだと記憶すと。佐々木繁氏来示には、陸中遠野地方で、草刈り誤って蛇の首を斬ると、三年経てその首槌形となり仇をなす。依ってかかる過失あった節は、われの故《せい》じゃない、鎌の故だぞと言い聞かすべしというと。これらどうやら上古蛇を草野《かやの》の主とし、野槌と尊んだ称《となえ》から訛《あやま》り出《い》でた俗伝らしい。
米国にやや野槌に似た俗信ある蛇フップ・スネークを産す。フップとは北※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]翁が、「たがかけのたがたがかけて帰るらん」と吟じた箍《たが》すなわち
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