掘魔《おうくつま》僧となり、樹下に目を閉じ居る。国王これを訪《おとな》い眼を開きて相面せよといいしに、わが眼睛|耀《てり》射《い》て、君輩当りがたしと答え、国史に猿田彦大神、眼|八咫鏡《やたのかがみ》のごとくにして、赤酸漿《あかかがち》ほど※[#「赤+色」、248−3]《かがや》く、八百万《やおよろず》神、皆|目勝《まか》ちて相問うを得ずとある。いずれも邪視強くて、他《ひと》を破るなり。さて天鈿女《あまのうずめ》は、目人に勝《すぐ》れたる者なれば、選ばれ往きて胸乳《むなち》を露わし、裳帯《ものひも》を臍下に垂れ、笑うて向い立ち、猿田彦と問答を遂げたとあるは、女の出すまじき所を見せて、猿田彦の見毒を制服したのだ。
『郷土研究』四巻二九六頁、尾佐竹猛氏、伊豆|新島《にいじま》の話に、正月二十四日は、大島の泉津村|利島《としま》神津島とともに日忌《ひいみ》で、この日海難坊(またカンナンボウシ)が来るといい、夜は門戸を閉じ、柊《ひいらぎ》またトベラの枝を入口に挿し、その上に笊《ざる》を被《かぶ》せ、一切外を覗《のぞ》かず物音せず、外の見えぬようにして夜明けを待つ。島の伝説に、昔泉津の代官|暴戻
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