上帝これを救わんとて、蛇に黠智《かっち》を授けたから、『聖書』に蛇のごとく慧《さと》しといったのじゃ。ここにおいて蛇来ってノアに、われ穴を塞いで水を止めたら何をくれるかと問うた。さいう爾《なんじ》は何を欲するかと問い返すと、蛇洪水|息《や》んで後、われと子孫の餌として毎日一人ずつくれと答う。途轍《とてつ》もない事と思うても背に替えられぬ腹を据えて、いかにも日に一人ずつ遣ろうと誓うたので、蛇尾の尖《さき》を以て穴を塞ぎ水を止め天魔敗走した。洪水息んでノア牲《いけにえ》を献《たてまつ》って上帝に謝恩し、一同大いに悦ぶ最中に蛇来って約束通り人を求めて食わんという。ノアこの人少なに毎日一人ずつ取られては、たちまち人種が尽きると怒って、蛇を火に投じ悪臭大いに起ちて上帝を不快ならしめた。由って上帝風を起し蛇の尸灰を世界中へ吹き散らし、蚤その灰より生じて世界中の人の血を吸う。その分量を合計すればあたかも毎日一人ずつ食うに等しいから、ノアの契約は永く今までも履行され居る訳になると。
 それから三河で伝うるは、蝮《まむし》は魔虫で、柳かウツギの木で打ち殺すと立ちどころに何千匹となく現われ来ると(早川孝太
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