−2]草《もうそう》蜈蚣|楝葉《せんだんのは》五色糸を畏る、故に燕を食うは水を渡るを忌み、雨を祀るには燕を用う、水患を鎮むるには鉄を用う、『説文』に竜春分に天に登り、秋分に淵に入る〉。
 支那に劣らずインドまた古来竜を神視し、ある意味においてこれを人以上の霊物としたは、諸経の発端|毎《つね》に必ず諸天神とともに、諸竜が仏を守護聴聞する由を記し、仏の大弟子を竜象に比したで知れる。『大方等日蔵経』九に、〈今この世界の諸池水中、各《おのおの》竜王ありて停止《とどま》り守護す、娑伽羅等八竜王のごときは、海中を護り、能く大海をして増減あるなからしむ、阿奴駄致《あぬたっち》等四竜王、地中を守護し、一切の河を出だす、流れ注ぎて竭きることなし、難陀《なんだ》優波難陀《うばなんだ》二竜王、山中を守護するが故に、諸山の叢林鬱茂す云々、毘梨沙《びりしゃ》等、小河水にて守護を為す〉。それから諸薬草や地や火や風や樹や花や果や、一切の工巧《てわざ》や百般の物を護る諸竜の名を挙げおり、『大灌頂神呪経《だいかんじょうしんじゅきょう》』に三十五、『大雲請雨経』に百八十六の竜王を列《なら》べ、『大方等大雲経』には三万八千
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