報ずる人少なからず、古インドに勇士ケレサスバ海蛇を島と心得その脊《せ》で火を焼く、熱さに驚き蛇動いて勇士を顛倒したと言い、十六世紀にオラウスが記したスウェーデンの海蛇は長《たけ》二百フィート周二十フィート、牛豕羊を食いまた檣《ほばしら》のごとく海上に起《た》ちて船客を捉え去ったといい、明治九年頃チリ辺の洋中で小鯨二疋一度に捲き込んだ由その頃の新聞で見た。『エンサイクロペジア・ブリタンニカ』十一版二十四巻にかかる大海蛇譚の原因は海豚《いるか》や海鳥や鮫や海狗や海藻が長く続いて順次起伏して浮き游《およ》ぐを見誤ったか、また大きな細長い魚や大烏賊を誤り観《み》たか、過去世に盛えた大爬虫プレシオサウルスの残党が今も遠洋に潜み居るだろうと論じ居る。『甲子夜話』二十六に年一、二度佐渡より越後へ鹿が渡海するに先游ぐもの頸《くび》と脊のみ見え、後なるはその頷を前の鹿の尾の上に擡《もた》げて游ぎ数十続く、遠望には大竜海を游ぐのごとく見ゆとある、今も熊野の漁夫海上に何故と知らず巨※[#「魚+賁」、第4水準2−93−84]《おおえび》などの魚群無数続き游ぎ、船坐るかと怖れ遁《に》げ帰る事ありとか、またホーズ
前へ
次へ
全155ページ中114ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング