のほかにも世界に乏しからぬ。したがって亡友カービー氏等が主張した、過去世に人間の遠祖が当身《そのみ》巨大怪異の爬虫輩の強梁跋扈《きょうりょうばっこ》に逢った事実を幾千代後の今に語り伝えて茫乎《ぼうこ》影のごとく吾人の記憶に存するものが竜であるという説のみでは受け取れず、予はかかる仏家の宿命通説のような曖昧な論よりは、竜は今日も多少実在する※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]等の虚張《こちょう》談に、蛇崇拝の余波や竜巻地陥り等諸天象地妖に対する恐怖や、過去世動物の化石の誤察等を堆《つ》み重ねて発達した想像動物なりというを正しと惟《おも》う。
竜譚の発達に最も力を添えたは海蛇譚で、海蛇の事は予在外中数度『ネーチュル』その他でその起原を論戦したが、事すこぶる煩わしいからここには略して竜譚に関する分だけを述べよう。『玉葉』四十に寿永三年正月元日伊勢怪異の由を源義仲の注進せる内に、元日の夜大風雨雷鳴|真虫《まむし》蛇打ち寄せられ津々に藻に纏われてあるいは二、三石あるいは四、五石(石は百か)皆生きあり、両三日を経て紛失しおえぬ、およそ昔も今も真虫海より打ち上げらるる事
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