て常に呂湖の蜃と闘う、近邨《きんそん》で善く射る勇士程霊銑方へ蜃が道人に化けて来ていう、われ呂湖の蜃に厄《くる》しめらる、君我を助けなば厚く報ずべし、白練《しろねり》を束ねたる者は我なりと、明日霊銑|邨《むら》の少年と湖辺に鼓噪《こそう》すると須臾《しばらく》して波湧き激声雷のごとく、二牛|相《あい》馳《は》せるを見るにその一|甚《いと》困《くる》しんで腹肋皆白し、霊銑後の蜃に射《い》中《あ》てると水血に変じ、傷ついた蜃は呂湖に帰る途上で死んだとまであって跡がないが約束通りぐっすり礼物を占《せし》めただろう、『続捜神記』から『法苑珠林』に引いた話にいわく、呉の末臨海の人山に入って猟し夜になって野宿すると身長《みのたけ》一丈で黄衣白帯した人来て我明日|讐《かたき》と戦うから助けくれたら礼をしようというたので、何の礼物に及びましょう必ず助けましょうというと、明食時君渓辺に出よ、白帯したのは我黄帯は敵だといって去った、明日出て見ると果して岸の北に声あり草木風雨に靡《なび》くがごとく南も同様だ、唯《と》見《み》ると二大蛇長十余丈で渓中に遇うて相《あい》繞《まと》うに白い方が弱い、狩人射て黄な奴を殺した、暮方に昨《きのう》の人来って大いにありがたい、御礼に今年中ここで猟しなさい、明年となったら慎んで来ないようといって去った、狩人そこに停《とど》まり一年猟続け所猟《えもの》甚だ多く家巨富となった、それでよせば好いに数年の後前言を忘れまた往き猟すると白帯の人また来て君はわが言を用いずここへ死にに来た、前年殺した讐の子すでに長じたから必ず親の仇と君を殺すだろうが我知るところでないと言ったので、狩人大いに恐れて走らんとするところへ黒装束した三人皆長八尺の奴が来て口を張って人を殺したとあるから毒気に中《あ》てたんだろ。芳賀博士はこの話を『今昔物語』十巻三十八語の原《もと》と見定められた、その話は昔|震旦《しんたん》の猟師海辺に山指し出た所に隠れて鹿を待つと、海に二つの竜現われ青赤|※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]《く》い合い戦うて一時ばかりして青竜負けて逃ぐ、その夜そこに宿り明日見れば昨と同時にまた戦うて青竜敗走した、面白くてその夜もそこに宿って三日目にまた戦うて青竜例の通りというところを、猟師|箭《や》を矯《た》めて赤竜に射中《いあ》てると海中に入って、青竜も海に入ったが玉
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