ソウなどこの属の物だ。シラタマソウは英国等に自生し、若芽が莢豌豆とアスパラガスの匂ひを兼ぬるからそれらに代用する。札幌辺に生えるといふから料理に使ひ試すべしだ。

 パースレイ[#「パースレイ」はゴシック体]
 只今花さく。至つてまづい花だが、古ギリシヤ人はヘルキュレス初めてこれを冠つたとて、極めてこれを尊び、乾からびたパースレイの冠をイスミヤ競技の勝者に授けた。これを佩ると、心落ちつき食慾が進むとて会席の客がその冠を戴いた。又、死骸にこの草の枝を撒いたから、人が死際にあるをパースレイが入用だといつた。プルタルクス説に、パースレイを負ふた驢馬に会つた軍隊が敗軍の凶兆と心得て大騒ぎしたと。又、畑を作るに先づパースレイとヘンルウタをその縁に植た。因つてまだ実行に取かゝらぬといふ代わりに、やつとパースレイとヘンルウタの段だといつた。ヘンルウタも今さき、これもまづい花だ。匂ひが強いので諸虫の毒を消し、眼を明らかにし智を鋭くし、女が食ふと操が固まるというた。昔、マルセイユでペスト流行の際、盗賊四人、この草で酢を作り飲んで少しも感染せず、片つ端しからペストの家に入つて大窃みをした。アリストテレスは
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