びくのを聞いた時に、清造は、はっとわれに返りました。気がついてみると、それは凧屋《たこや》の店の裏《うら》でした。台所《だいどころ》のわきのせまい部屋《へや》にあおむけにねかされて、枕《まくら》もとに、さっき店でみたおやじさんがすわっていて、そのうしろにはあかんぼうをおぶったおかみさんが、立っていました。
「どうした、気がついたか。」
 ひげの少しのびたおやじさんが笑いながら聞きました。清造にはなんのことだかわからないので、やっとからだを起《おこ》しながら、あたりをきょろきょろ見まわしました。
「はは、驚《おどろ》いているな。おまえはな、さっき店の前に立って、凧《たこ》の絵を見ているうちに、ううんといってぶっ倒《たお》れてしまったんだ。それでおれが驚いて、あわててここへかつぎこんで、介抱《かいほう》してやったんだ。どうした、どこかからだでも悪いのか。」
 おやじさんは、顔のこわい割合《わりあい》にやさしい声を出して聞きました。
「ううむ。」
 清造はやっと顔を横にふりました。
「ははあ、それじゃあ腹がへったんだな、え、おい、そうだろう。」
 おやじさんはまた聞きなおしました。清造はしば
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