かつ平易なものを読むと一日中の仕事欲を害する、ということが書いてありました。非常に感心して同室者一同――私の部屋には変に頑強な男がそろっていたのですが――と申し合わせて、なんでも半年ぐらい新聞の購読を中止したことがありました。それでも新聞を読むことの好きな私にはどうもがまんができないので、そっと図書館で読んでいるところを同室者にみつかってひどくおこられたことなどがありました。そんなことを思い出してみると、私の新聞好きもずいぶん古いものです。
 今でも、毎朝たくさんの新聞を読みます。何がおもしろいのか知らないが、とにかくよく読みます。そうして読みながら種々のことを考えます。ところで、このごろの新聞を読んで、一番目につくのは何かというと、「殺人」、「情死」さては「大臣の待合会議」、「不正」、「疑獄」というような不愉快な文字がたくさん目につくのはもちろんのことですが、「人民の役人に対する不平」を記した記事の多いことは特に私の注意をひきます。そのうちから、最近最も私の注意をひいた一記事を例にひいて「役人の頭」という一文を草してみたいと思います。例証として引用する事柄を一つだけ引き離してみると、
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