るにすぎないけれども、やがて法社会学が段々に発達してゆくにつれて、それによって発見され定立された法の社会法則が、立法上にもまた裁判上にも利用されるようになり、かくして法政策学としての実用法学が段々に科学化するに至るのだと私は考えている。工科の学問にしても臨床医学にしても、自然科学が今のように発達するまでは、専ら工人や医者の個人的経験や熟練によってのみ行われていたのであって、それらの学問が現在のように科学の名にふさわしい学問にまで発達したのは、自然科学の発達によって自然法則を利用することができるようになったからである。法学の場合には、今なおそれと同じ程度に発達した法社会学がないために、実用法学が十分に科学化していないけれども、最近における法史学や比較法学の発達、その他人種学、社会学等の発達は、ようやく法の社会法則の発見を目指す科学としての法社会学の成立を可能ならしめつつある。私は、この科学が、やがて自然科学と同じ程度に実用法学に必要な社会法則を十分提供し得るところまで発達すれば、法学が真に科学の名にふさわしい学問にまで発展し、立法や裁判のごとき法実践が、もっと無駄と無理のない合理的なもの
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