てなければ世の中の人が承知しない。しかのみならず物差しをあててみなを感心させるには種々な材料を使ってあるいは法律第何百何条にこう書いてあるから、おまえもしかじかこれこれと心得ろといえば聞く者もなるほどそうかと思う。またあるいは法律には明文がない、けれどもこれは多年当裁判所においてかくのごとく判決したるをもっておまえだけが特にかくかくの取扱いを受けるわけにはいかないといって聞かせれば、なるほどそうかと思う。またさらにある場合には、どうも判例もなし法律にもうまいことが書いてない。そのときには裁判所はなんというかというと、これこれの点はかくかくとならなければならないが、これはわが学界、学者の説を聞いてみても「通説おおむねかくのごとし」だから、おまえもそう思え、といって聞かせれば、これを聞く人も感心して、なるほどこんなえらい学者たちがそういっているのならば私もやむをえない、裁判に服します、というようなぐあいで判決が正当な理由あるものとして一般に取り扱われることになるのです。要するに裁判は最初議会の作ってくれた物差しを機械的に動かしただけでできるのではありません。裁判所は一方においてはまずその全
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