でいるような顔付をしている。人々の狩り立てられたような様子の中にも、いよいよ追い詰められるとなると振り返って反抗するかもしれぬという野獣の気持がまだ幾分かはあった。彼等は銷沈していてこそこそしてはいたけれども、焔の眼は彼等の間にないではなかった。また、彼等の抑えつけている感情のために血の気の失せた、きっと結んでいる脣もないではなかった。また、彼等が自分でかけられるか、それとも人にかけてやることを考えている、あの絞首台の縄に似たのに顰《ひそ》めている額《ひたい》もないではなかった。商売の看板は(そしてそれは店の数とほとんど同じほどあったが)、いずれも皆、窮乏の物凄い図解であった。牛肉屋や豚肉屋は肉の一番脂肪分の少い骨の多い下等なところだけを描いたのを出していた。パン屋は一番粗末なけちなパン塊を描いて出していた。酒店で酒を飲んでいるところとしてぞんざいに画いてある人々は、水っぽい葡萄酒やビールの量りの悪いことをぶつぶつ言いながら、凄い顔をして互にひそひそ話をしていた。道具類と兇器類とを除いては、景気よく描き出されているものは何一つとしてなかった。ただ、刃物師の小刀や斧は鋭利でぴかぴかしてい
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