が》されるはずはありません。他の国では私は家名を名乗っておりませんから。」
呼鈴《ベル》を鳴らしたのは隣の寝室に灯火をつけさせるためだった。その室は今、通路の戸口から、ぱっと明るく輝いた。侯爵はその方を見やって、側仕《そばづかえ》の足音の遠ざかってゆくのに耳を傾けた。
「イギリスはお前にはよほど気に入っておるようじゃのう、お前があちらでまずうまくいっているところを見るとな。」と彼は、それから、微笑を浮べながら平静な顔を甥に向けて、言った。
「さっきも申し上げましたが、私があちらでうまくいっていることについては、あなたのお蔭かもしれないと思っていますよ。その他《ほか》のことについては、あそこは私の避難所なのです。」
「奴らは、あの自慢屋のイギリス人どもは、イギリスはたくさんの人間の避難所になっている★と言うておるのう。お前は同国人であすこを避難所にしている人間を知っておるじゃろう? 医者じゃが?」
「ええ。」
「娘と一緒かのう?」
「ええ。」
「なるほど。」と侯爵が言った。「お前は疲れているじゃろう。では、おやすみ!」
彼が例の極めて慇懃な態度で頭を下げた時に、その微笑している顔には
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