、その室と室とを通ずる扉《ドア》は空気がどの室をも自由に吹き抜けられるようにと開《あ》け放してあったので、ロリー氏は、自分の周囲のどこにも目につくその空想上の類似★ににこにこしながら眼を留めて、一室から次の室へと歩いて行った。最初の室は一番上等の室で、そこにはリューシーの小鳥と、草花と、書物と、机と、裁縫台と、水彩絵具の箱とがあった。二番目の室は医師の診察室で、食堂にも使われていた。中庭の例の篠懸の樹のさらさらと動く葉影で絶えず変化する斑《まだら》模様をつけられている三番目の室は、医師の寝室であって、――その室の一隅には、今は使われていない靴造りの腰掛台《ベンチ》と道具箱とが、パリーの郊外サン・タントワヌのあの酒店の傍の陰惨な建物の六階にあったとほぼ同じようにして、置いてあった。
「どうも驚くなあ、」とロリー氏はあたりを見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]すのを止《や》めて、言った。「あの人はあんな自分の苦しみを思い出させるものを身の周りに置いとくなんて!」
「何だってそんなことに驚くんですか?」という不意の問が彼をびくりとさせた。
その問は、彼がドーヴァーのロイアル・ジョー
前へ
次へ
全341ページ中214ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ディケンズ チャールズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング