るであろう。が、そういう法令が発布されていないので、彼はおそらくはそれを受けることはあるまい。美徳というものは、詩人たちが古来述べているように(そういう詩の幾多の文句を陪審官諸氏が一語一語舌端に諳《そら》んじておられるであろうことを自分はよく知っているが、――と検事長が言うと、陪審官たちの顔は彼等がそういう詩句については少しも知らぬことに気がついていささか疚《やま》しいような色を表《あらわ》した)、ある意味では伝染するものであり、愛国心、すなわち国を愛する心として知られているかの赫々たる美徳はとりわけそうである。清浄潔白な一点の非難すべきところもない、国王陛下のためのこの証人、陛下の御事に言及するのはいかに些細なことであっても名誉であるが、この証人の示した気高い亀鑑は、被告の従僕に伝染し、彼の心に、その主人の卓子《テーブル》の抽斗《ひきだし》やポケットを調べ、主人の書類を隠匿しようという、神聖な決意を生ぜしめたのである。自分(検事長閣下)はこの賞讃すべき従僕に加えられる若干の誹謗を聞くことを覚悟している。が、全体から言って、自分はこの従僕を自分の(検事長閣下の)兄弟姉妹よりも好み、彼を
前へ 次へ
全341ページ中151ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ディケンズ チャールズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング