いている鉄銹をしゃぶり取っていたが、その二人が何者であるかを聞こうとして頸を差し伸ばした。彼の近くにいた群集が、その質問を、その親子の一番近くにいる傍聴者の方へだんだんと押し送っていた。そしてその傍聴者のところからそれはいっそうのろのろと押し送られて戻って来て、ようやくジェリーのところに著いた。――
「証人だとさ。」
「どちら側の?」
「反対側の。」
「どっち側に反対の?」
「被告側にだってさ。」
 検事長閣下が絞首索を綯《な》い、首斬斧を研《と》ぎ、処刑台に釘を打ち込まんがために立ち上った時に、裁判官は、ずうっと見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]していた眼を元へ戻し、自分の座席で反《そ》り返って、自分の手中にその生命を握っている人間をじっと眺めた。
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    第三章 当外《あてはず》れ

 検事長閣下は陪審官に向って次のようなことを告げなければならないと言った。諸君の面前にいる被告人は、年こそ若いが、死刑に価する叛逆の術策では極めて老獪である。彼が吾々の公敵と通信していることは、今日《きょう》や昨日《きのう》からのことではなく、昨年や一昨年からのことでさえな
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