べられた。後の方の列にいる見物人たちは、彼の髪の毛一筋でも見逃すまいと、立ち上った。法廷の平場《ひらば》にいる人々は、誰に迷惑をかけようとも彼を一目見てやろうと、前にいる人々の肩に手をかけ、――彼の姿をどこからどこまで見ようと、足を爪立てて立ったり、何かの出張りの上に乗っかったり、ないも同然のものの上に立ったりした。この後者の仲間の中に一際目立って、ニューゲートの忍返《しのびがえ》しを打ってある塀の一小片が生きて来たように、ジェリーが立っていた。彼はここへやって来る途中で一杯ひっかけて来たのだが、そのビール臭い息《いき》を、囚人めがけて喚《わめ》き出した。それは、囚人に向って流れている、他のビールや、ジン酒や、茶や、珈琲や、何やかやの波と雑《まじ》った。その波は、既に、囚人の背後にある幾つかの大きな窓にぶつかって砕けて、汚《よご》れた霧と雨になっていたのだ。
こういうすべての凝視と咆哮との対象というのは、日に焦《や》けた頬と黒眼がちな眼とをした、体格もよく容貌もよい、二十五歳ばかりの青年であった。彼の身分で言えば青年紳士であった。彼は、じみに、黒かあるいはごく濃い鼠の服を著ていた。そ
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