ら遂に王子と結婚することになる。ここに「シンダレラの教母」と言ってあるのは、その教母が宮殿の舞踏会に行くシンダレラのために魔法で南瓜を馬車に、※[#「鼠+奚」、第4水準2−94−69]鼠を馬に、襤褸著物を美服に変えたからである。
青い部屋  フランスの中世紀の有名な物語にある青髯という男が、幾度も結婚してその妻を皆殺し、死体を青色の部屋に隠しておいて他の者に入るのを許さなかったということから、誰をも入れなかったプロス嬢の室を諧謔的にこう言ったのであろう。
ロンドン塔  ロンドンのほぼ中央のテムズ河北岸にある古くから有名な建築物。一〇七八年に建築され始め、後次第に増築されたのである。初めは城廓として築造され、王宮として用いられた時代もあったが、永い間政治犯の牢獄として用いられていた。その後種々の観覧物の陳列所や武器庫となった。
あなた方も御存じのように、私はあすこへ…………  ダーネーは例の叛逆罪の廉で捕えられていた時にしばらくロンドン塔に監禁されたのであろうか。
DIG  英語の「掘れ」という語。
彼は片手を頭へやって突然…………  マネット医師がなぜこの時このような挙動をしたかは、この物語の終りの方(第三巻第九章)に至って明かになる。
聖ポール寺院  ロンドン市の中央にある大寺院。ソホー広場の東方約一マイル半、クラークンウェルの南にある。
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 〔第七章 都会における貴族〕
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モンセーニュール  フランスで貴族や高僧などに対して用いた敬称であり、「閣下」、「殿下」、「猊下」の意味に当るフランス語である。その語を作者はフランス貴族の擬人法として用いたのであって、ここでは、「モンセーニュール」は個人の名であると共に、また当時のフランスの貴族を象徴しているのである。後の章では、この語は本来の意味の通りに個人に対する敬称として用いられ、また、更に後の章では、フランス全貴族の代名詞としても用いられる。
チョコレート  ここではチョコレート飲料をさす。チョコレートを砂糖湯または牛乳に溶かしたもの。
国を売った陽気なステューアト  イギリス国王チャールズ二世(一六三〇―一六八五)をさす。ステューアトは、彼の法外な放逸の費用を得るために、フランス国王ルイ十四世から巨額の金銭を得て、国会の意志に反して、ルイ十四世のオランダに対する戦争においてフランスを援助するというドーヴァー条約を、一六七〇年に密かに締結した。このチャールズ二世は「陽気な国王」と綽名されていた。
「モンセーニュール曰いけるは、地とこれに盈てる物はわがものなり。」  新約全書コリント前書第十章第二十六節に「地とこれに盈てる物は主のものなればなり。」とある。その「主のもの」という原文の代名詞を「わがもの」と変えたのである。
収税請負人  フランスの王政時代に、一区域の租税を徴収する特権を政府から得て、その代償として政府に一定の額を支払い、その契約の定額以上に人民から搾取したものはことごとく自己の懐に収めることが出来た収税吏。この収税請負人はこうして人民を誅求して、大革命の前には人民にはなはだしく怨まれていた。
面紗をかぶる  修道院の尼僧になることを意味する。
バベルの骨牌塔 「バベルの塔」は、旧約全書創世紀第十一章に記されている、太古バビロンで天に昇るために建築しようとした高塔で、架空的の計画という意味に使われており、「骨牌塔」とは、骨牌札で築いたようなすぐに崩れる塔という意味であろう。
その社会の天使たち  上流社会の婦人たちをさす。その中にはさすがの間諜でも一人の母性をも見つけ出すことが出来ないほど、上流社会の家庭は乱れていた、というのがこの前後の意味である。
痙攣教徒  十七世紀頃フランスに起った一つの狂信的な宗派の信者。フランスにおけるヤンセン教徒の一派であって、痙攣的発作に陥ったりその他の奇怪な動作によって奇蹟的の治療を行うと称した。彼等はまたその痙攣的動作で未来を予言し社会を改善することが出来ると信じた。
類癇  全身硬直する病気。
テュイルリーの宮殿  以前パリー市の中央にあったフランス国王の宮殿。ルイ十四世時代からは華美を尽していた。
扁底靴  踵のごく低い、または踵のない、エナメル革の浅い靴。主として舞踏の時などに用いられるものである。
車輪刑  罪人の手足を車輪に縛って死に致した残酷な処刑。
ムシュー・パリー  パリー市の死刑執行吏をこう言った。普通にはムシュー・ド・パリー。
監督派流儀に  未詳。この監督派というのはプロテスタント監督教会派をさすのであって、その唱道した監督制度主義とは教会の主権を法王のような一主権者に委ねないで教会の監督たちの手に委ぬべきであるとしたものであった。
一絞刑吏に
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