の本体と秘密とは隣室にあるのじゃないか、更に好くその跡を辿って見ると、どうもその光はそこから射して来るようだからと云うことを考え附いた。この考えがすっかり頭の中を占領すると、彼はそっと起き上がって、上靴《すりっぱ》を穿いたまま戸口の方へ足を引き摺りながら歩み寄った。
スクルージの手が錠にかかったその刹那、耳慣れぬ声が彼の名を喚んで、彼に中に這入れと命じた。彼はそれに従った。
それは自分の部屋であった。それに毛頭疑いはない。ところが、それが驚くべき変化を来していた。四方の壁にも天井にも生々した緑葉が垂れ下がって、純然たる森のように見えた。その到るところに、きらきらとした赤い果実《このみ》が露のように燦めいていた。柊《ひいらぎ》や寄生木や蔦のぱりぱりする葉が光を照り返して、さながら無数の小形の鏡が散らかしてあるように見えた。スクルージの時代にも、マアレイの時代にも、また幾十年と云う過ぎ去った冬季の間にも、この化石したような冴えない煖炉がついぞ経験したことのないような、それはそれは盛んな火焔が煙突の中へぼうぼうと音を立てて燃え上っていた。七面鳥、鵞鳥、猟禽、家禽、野猪肉、獣肉の大腿、仔豚
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