る毛糸で編んだ帽子のこと。)を被った老紳士が、今二インチも自分の身丈《せい》が高かろうものなら、きっと天井に頭を打ち附けたろうと思われるような、丈の高い書机の向うに腰掛けているのを一目見ると、スクルージは非常に興奮して叫んだ。
「まあ、これは老フェッジウィッグじゃないか! ああ! フェッジウィッグがまた生き返った!」
老フェッジウィッグは鉄筆を下に置いて、時計を見上げた。その時計は七時を指していた。彼は両手を擦った。たぶたぶした胴服《チョッキ》をきちんと直した。靴の先から頭の頂辺まで、身体中揺振って笑った。そして、気持の好さそうな、滑らかな、巾のある、肥った、愉快そうな声で呼び立てた―――
「おい、ほら! エベネザア! ディック!」
今や立派な若者になっていたスクルージの前身は、仲間の丁稚と一緒に、てきぱきと這入って来た。
「ディック・ウイルキンスです、確に!」と、スクルージは幽霊に向って云った。「なるほどそうだ。あそこに居るわい。彼奴は私に大層懐いていたっけ、可哀そうに! やれ、やれ!」
「おい、子供達よ」と、フェッジウィッグは云った。「今夜はもう仕事なぞしないのだ。聖降誕祭だよ
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