ージは精密にそれを観察して見た)、弗箱や、鍵や、海老錠や、台帳や、証券や、鋼鉄で細工をした重い財嚢やで出来ていた。彼の体躯は透き通っていた。そのために、スクルージは、彼を観察して、胴衣を透かして見遣りながら、上衣の背後に附いている二つの釦子《ぼたん》を見ることが出来た位であった。
スクルージはマアレイが腸《はらわた》を持たないと云われていたのを度々聞いたことがあった。が、今までは決してそれを本当にしてはいなかった。
いや、今でもそれを本当にはしなかった。彼は幽霊をしげしげと[#「しげしげと」は底本では「しけじけと」]見遣って、それが自分の前に立っているのだとは承知してはいたけれども、その死のように冷い眼の人をぞっとさせるような影響を感じてはいたけれども、また頭から顎へかけて捲き附けていた褶んだ半帛の布目に気が附いてはいたけれども――こんな物を捲き附けているのを彼は以前見たことがなかった、――それでもまだ彼は本当に出来なくって、我と我が感覚を疑おうとした。
「どうしたね!」と、スクルージは例の通り皮肉に冷淡に云った。「何ぞ私に用があるのかね。」
「沢山あるよ。」――マアレイの声だ、疑
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