の世の中では、どんな事でも善い事と云うものは、その起り始めにはきっと誰かが腹を抱えて笑うものだ、笑われぬような事柄は一つもないと云うことをちゃん[#「ちゃん」に傍点]と承知していたからである。そして、そんな人間はどうせ盲目[#「盲目」に傍点]だと知っていたので、彼等がその盲目を一層醜いものとするように、他人《ひと》を笑って眼に皺を寄せると云うことは、それも誠に結構なことだと知っていたからである。彼自身の心は晴れやかに笑っていた。そして、かれに取ってはそれでもう十分であったのである。
 彼と精霊との間にはそれからもう何の交渉もなかった。が、彼はその後ずっと禁酒主義の下に生活した。そして、若し生きている人間で聖降誕祭の祝い方を知っている者があるとすれば、あの人こそそれを好く知っているのだと云うようなことが、彼について終始云われていた。吾々についても、そう云うことが本当に云われたら可かろうに――吾々総てについても。そこで、ちび[#「ちび」に傍点]のティムも云ったように、神よ。吾々を祝福し給え――吾々総ての人間を!



底本:「クリスマス・カロル」岩波文庫、岩波書店
   1929(昭和4)
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