、またこれ等の謎の解決を容易にしてくれるだろうと云う期待を持っていたからである。
 彼は自分の姿を求めて、その場で四辺を見廻わした、が、自分の居馴れた片隅には他の男が立っていた。そして、時計は自分がいつもそこに出掛けている時刻を指していたけれども、玄関から流れ込んで来る群衆の中に自分に似寄った影も見えなかった。とは云え、それはさして彼を驚かさなかった。何しろ心の中に生活の一変を考え廻らしていたし、またその変化の中では新たに生れた自分の決心が実現されるものと考えてもいたし、望んでもいたからである。
 静かに黒く、精霊はその手を差し伸べたまま彼の傍に立っていた。彼が考えに沈んだ探究から眼を覚ました時、精霊の手の向き具合と自分に対するその位置から推定して、例の見えざる眼は鋭く自分を見詰めているなと思った。そう思うと、彼はぞっと身顫いが出て、ぞくぞく寒気がして来た。
 二人はその繁劇な場面を捨てて、市中の余り人にも知られない方面へ這入り込んで行った。スクルージも兼てそこの見当も、またこの好くない噂も聞いてはいたが、今までまだ一度も足を踏み入れたことはなかった。その往来は不潔で狭かった。店も住宅
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