云うのは、むしろ市の方で二人の周囲に忽然湧き出して、自ら進んで二人を取り捲いたように思われたからである。が、(いずれにしても)彼等は市の中心にいた。すなわち取引所に、商人どもの集っている中にいた。商人どもは忙しそうに往来したり、衣嚢の中で金子をざくざく鳴らせたり、幾群れかになって話しをしたり、時計を眺めたり、何やら考え込みながら自分の持っている大きな黄金の刻印を弄《いじ》ったりしていた。その他スクルージがそれまでによく見掛たような、いろいろな事をしていた。
精霊は実業家どもの小さな一群の傍に立った。スクルージは例の手が彼等を指差しているのを見て、彼等の談話を聴こうと進み出た。
「いや」と、恐ろしく頤の大きな肥った大漢が云った。「どちらにしても、それについちゃ好くは知りませんがね。ただあの男が死んだってことを知っているだけですよ」
「いつ死んだのですか」と、もう一人の男が訊ねた。
「昨晩だと思います。」
「だって、一体いかがしたと云うのでしょうな?」と、またもう一人の男が非常に大きな嗅煙草の箱から煙草をうん[#「うん」に傍点]と取り出しながら訊いた。「あの男ばかりは永劫死にそうもないよ
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