てきぱきした質問の銃火は、彼からして一つの動物について考えていることを誘《おび》き出した。それは生きている動物であった、何方かと云えば不快《いや》な動物、獰猛な動物であった、時々は唸ったり咽喉を鳴らしたりする、また時には話しもする、倫敦《ロンドン》に住んでいて、街も歩くが、見世物にはされていない、また誰かに引廻わされている訳でもない、野獣苑の中に住んで居るのでもないのだ、また市場で殺されるようなことは決してない、馬でも、驢馬でも、牝牛でも、牡牛でも、虎でも、犬でも、豚でも、猫でも、熊でもないのだ。新らしい質問が掛けられる度に、この甥は新にどっと笑い崩れた、長椅子から立ち上って床《ゆか》をドンドン踏み鳴らさずに居られないほどに、何とも云いようがないほどくすぐられて面白がった。が、とうとう例の肥った娘が同じように笑い崩れながら呶鳴った。――
「私分かりましたわ! 何だかもう知っていますよ、フレッド! 知っていますよ。」
「じゃ何だね?」と、フレッドは叫んだ。
「貴方の伯父さんのね、スクル――ジさん!」
 確かにその通りであった。一同はあっ[#「あっ」に傍点]と感嘆これを久しゅうした。でも、
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