「だけに憂ウツであった。だが周囲の悲惨な人々にくらべると、私はまだ幸福な方かもしれなかった。私はほとんど傷も受けなかったし、ピンと立って歩くことができたのだ。
八日の朝があけると私は東練兵場を横切って広島駅をめざして歩いて行った、朝日がキラキラ輝いていた。見渡すかぎり、何とも異様なながめであった。
駅の地点にたどりつくと、焼けた建物の脇で、水兵の一隊がシャベルを振り回して、破片のとりかたづけをしていた。非常に敏ショウで発ラツたる動作なのだ。ザザザザと破片をすくう音が私の耳にのこった。そこから少し離れた路上にテーブルが一つぽつんと置いてある。それが広島駅の事務所らしかった。私はその受付に行って汽車がいま開通しているものかどうか尋ねてみた。
それから私は東照宮の方へ引かえしたのだが、ふと練兵場の柳の木のあたりに、一匹の馬がぼんやりたたずんでいる姿が目にうつった。これはクラもなにもしていない裸馬だった。見たところ、馬は別に負傷もしていないようだが、実にショウ然として首を低く下にさげている。何ごとかを驚き嘆いているような不思議な姿なのだ。
私は東照宮の境内に引かえすと石垣の横の日陰に横
前へ
次へ
全249ページ中247ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
スウィフト ジョナサン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング