ハ白かったのは、綱渡りです。これは地面から二フィート十二インチばかりに、細い白糸を張って、その上でやります。
 この曲芸は、宮廷の高い地位につきたいと望んでいる人たちが、出て演じるのでした。選手たちは子供のときから、この芸を仕込まれるのです。仮に、宮廷の高官が死んで、その椅子が一つ空いたとします。すると、五六人の候補者が、綱渡りをして皇帝に御覧にいれます。中で一番高く跳び上って落ちない者が、その空いた椅子に腰かけさせてもらえるのです。
 ときには大臣たちが、この曲芸をして、こんなに高く跳べますよと、皇帝に御覧にいれることもあります。大蔵大臣のフリムナップなど、実にあざやかで、高く跳び上ります。私は彼が細い糸の上に皿を置いて、その上でとんぼ[#「とんぼ」に傍点]返りをするところを見ました。
 だが、この曲芸ではとき/″\、死人や怪我人を出すことがあります。私も選手が手足をくじいたのを二三回見ました。中でも、一番あぶないのは、大臣たちの曲芸です。それはお互に仲間の者に負けまいとして、あんまり気張ってやるので、よく綱から落っこちます。大蔵大臣のフリムナップでさえ、一度なんか、も少しで頭の骨を
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