チて、その空樽を投げおろしてくれと手まねをします。私が左手で胸の上の樽を投げてやると、小人たちは一せいに拍手しました。それにしても、私の身体の上を勝手に歩きまわっている大胆さ。私の身体は彼等から見れば、山ほどもあるのです。それを平気で歩きまわっているのです。
しばらくすると、皇帝陛下からの勅使が、十二人ばかりのお供をつれてやって来ました。私の右足の足首からのぼって、どん/\顔のあたりまでやって来ます。その書状をひろげたかとおもうと、私の眼の前に突きつけて、何やら読み上げました。それから、しきりに前方を指さしました。この意味は、あとになってわかったのですが、指さしている方向に、小人国の都があったのです。そこへ、皇帝陛下が、私をつれて来るよう言いつけられたのだそうです。
私は、どうかこの紐を解いてくださいと、くゝられていない片方の手で、いろ/\と手まねをして見せました。すると勅使は、それはならぬというふうに、頭を左右に振りました。その代り、食物や飲物に不自由させぬから安心せよ、と彼は手まねで答えました。
勅使が帰ってゆくと、大勢の小人たちが、私のそばにやって来て、顔と両手に、何かひどく香りのいゝ、油のようなものを塗ってくれました。と間もなく、あの矢の痛みはケロリとなおりました。
私は気分もよくなったし、お腹も一ぱいだったので、今度は睡くなりました。そして八時間ばかりも眠りつゞけました。これもあとで聞いてわかったのですが、私が飲んだ、あのお酒には眠り薬がまぜてあったのです。
最初、私が上陸して、草の上に何も知らないで眠っていたとき、小人たちは、私を発見すると、大急ぎで皇帝にお知らせしました。そこでさっそく、会議が開かれ、とにかく、私をしばりつけておくこと、食物と飲物を送ってやること、私を運搬するために、大きな機械を一つ用意すること、こんなことが会議で決まったらしいのです。
で、さっそく、五百人の大工と技師に言いつけて、この国で一番大きな機械を持ち出すことになりました。それは長さ七フィート、幅四フィートの木の台で、二十二箇の車輪がついています。私が眠り薬のおかげで、ぐっすり何も知らないで眠っている間に、この車が私の身体にぴったり横づけにされていました。だが、眠っている私をかつぎ上げて、この事に乗せるのは大へんなことだったらしいのです。
まず第一に、高さ一フート
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