ス令に従わないと、最後の手段を取ります。それは、この島を彼等の頭の上に落してしまうのです。こうすれば、家も人も何もかも、一ペんにつぶされてしまいます。
しかし、これはよく/\の場合で、めったにこんなことにはなりません。王もこのやり方は喜んでいません。それにもう一つ、これには困ることがあるのです。つまり、都市には高い塔や柱などが立ち並んでいるので、その上に島を落すと、島の底の石が割れるおそれがあります。もし底の石が割れたりすると、磁石の力がなくなって、たちまち島は地上に落っこちてしまうことになるのです。
2 発明屋敷
私はこの国で、別にいじめられたわけではないのです。だが、どうも、なんだか、みんなから馬鹿にされているような気がしました。この国では、王も人民も、数学と音楽のことのほかは、何一つ知ろうとしないのです。だから私なんか、どうも馬鹿にされるのでした。
ところが、私の方でも、この島の珍しいものを見物してしまうと、もう、こゝの人間たちには、あきあきしてしまいました。彼等はいつも、何か我を忘れて、ぼんやり考えごとに耽っているのです。附き合う相手として、これほど不愉快な人間はありません。で、私はいつも女や、商人や、叩き役、侍童などとばかり話をしました。ものを言って、筋の通った返答をしてくれるのは、こういう連中だけでした。
私は勉強したので、彼等の言葉はだいぶん話せるようになっていました。で、私はこうして、ほとんど相手にもしてもらえないような国に、じっとしているのが、たまらなくなったのです。一日も早く、この国を去ってしまいたいと思いました。
私は陛下にお願いして、この国から出られるようにしてもらい、二月十六日に、王と宮廷に別れを告げました。ちょうどそのとき、島は首府から二マイルばかり郊外の山の上を飛んでいましたので、私は一番下の通路から、鎖を吊り下げてもらって地上におりました。
その大陸は、飛島の国王に属していて、バルニバービといわれています。首府はラガードと呼ばれています。
私は地上におろされて、とにかく満足でした。服装は飛島のと同じだし、彼等の言葉も、私はよくわかっていたので、何の気がかりもなく、町の方へ歩いて行きました。私は飛島の人から紹介状をもらっていましたので、それを持って、ある偉い貴族の家を訪ねて行きました。すると、その貴族は、彼
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