ォな連中が、毎日、雲のように押しかけて来ます。
そのために、村々はほとんど空っぽになり、畑の仕事も家の仕事も、すっかりお留守になりそうでした。で、皇帝から命令が出ました。見物がすんだ人はさっさと帰れ、無断で私の家の五十ヤード以内に近よってはいけない、と、こんなことが決められました。
ところで、皇帝は何度も会議を開いて、一たい、これはどうしたらいゝのかと、相談されたそうです。聞くところによると、朝廷でも、私の取り扱いには、だいぶ困っていたようです。あんな男を自由の身にしてやるのも心配でしたが、なにしろ、私の食事がとても大へんなものでしたから、これでは国中が飢饉になるかもしれない、というのです。
いっそのこと、何も食べさせないで、餓死させるか、それとも、毒矢で殺してしまう方がよかろう、と言うものもありました。
だが、あの男に死なれると、山のような死体から発する臭《におい》がたまらない、その悪い臭は、国中に伝染病をひろげることになるだろう、と説くものもありました。
ちょうど、この会議の最中に、私があの六人のやじ[#「やじ」に傍点]馬を許してやったことが伝えられました。すると、皇帝も大臣も、私の行いに、すっかり感心してしまいました。
さっそく、皇帝は、勅命で、私のために、村々から毎朝牛六頭、羊四十頭、そのほかパン、葡萄酒などを供出するよう、命令されました。
それから、六百人のものが、私の御用係にされ、私の家の両側にテントを張って寝とまりすることになりました。それから私の服を作ってくれるために、三百人の仕立屋が、やとわれました。
それから、宮廷で一番えらい学者が六人、この国の言葉を私に教えてくれることになりました。私は三週間ぐらいで、小人国の言葉がしゃべれるようになりました。
皇帝もとき/″\私のところへ訪ねて来られました。私は皇帝にひざまずいて、
「どうか、私を自由な身にしてください。」
と何度もお願いしました。
すると皇帝は、
「もうしばらく待て。」
と言われるのでした。
「自由な身にしてもらうには、お前はまず、この国と皇帝に誓いをしなければいけない。それから、お前はいずれ身体検査をされるが、それも悪く思わないでくれ。たぶん、お前は何か武器など持っていることだろうが、お前のその大きな身体で使う武器なら、よほど危険なものにちがいない。」
私は皇帝に
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