桙でおられました。
 ある日、私は王の御機嫌をとるつもりで、こんなことを申し上げました。
「実は私は素晴しいことを知っているのです。というのは、今から三四百年前に、ある粉が発明されましたが、その製造法を私はよく知っているのです。まず、この粉というのは、それを集めておいて、これに、ほんのちょっぴりでも火をつけてやると、たとえ山ほど積んである物でも、たちまち火になり、雷よりももっと大きな音を立てゝ、何もかも空へ高く吹き飛ばしてしまいます。
 で、もし、この粉を真鍮《しんちゅう》か鉄の筒にうまく詰めてやると、それは恐ろしい力と速さで遠くへ飛ばすことができるのです。こういうふうにして、大きな奴を打ち出すと、一度に軍隊を全滅さすことも、鉄壁を破ったり、船を沈めてしまうこともできます。また、この粉を大きな鉄の球に詰めて、機械仕掛で敵に向って放つと、舗道は砕け、家は崩れ、かけらは八方に飛び散って、そのそばに近づくものは、誰でも脳味噌を叩き出されます。
 私はこの粉を、どういうふうにして作ったらいゝか、よく心得ているのです。で、職人たちを指図して、この国で使えるぐらいの大きさに、それを作らせることもできます。一番大きいので長さ百フィートあればいゝでしょうが、こうした奴を二三十本打ち出すと、この国の一番丈夫な城壁でも、二三時間で打ち壊せます。もし首都が陛下の命令に背くような場合は、この粉で首都を全滅させることだってできます。とにかく、私は陛下の御恩に報いたいと思っているので、こんなことを申し上げる次第です。」
 私がこんなことを申し上げると、国王はすっかり、仰天してしまわれたようです。そして呆れ返った顔つきで、こう仰せになりました。
「よくも/\お前のような、ちっぽけな、虫けらのような動物が、そんな鬼、畜生にも等しい考えを抱けるものだ。それに、そんなむごたらしい有様を見ても、お前はまるで平気でなんともない顔をしていられるのか。お前はその人殺し機械をさも自慢げに話すが、そんな機械の発明こそは、人類の敵か、悪魔の仲間のやることにちがいない。そんな、けがらわしい奴の秘密は、たとえこの王国の半分をなくしても、余は知りたくないのだ。だから、お前も、もし生命が惜しければ、二度ともうそんなことを申すな。」
 王御自身は、科学に興味を持たれ、自然に関する発見など非常に喜ばれたのですが、このことばか
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