《わたくし》奥さんならどうしたのですか」
「貫一さん!」
 彼は足擦《あしずり》して叫びぬ。満枝は直《ただ》ちに推伏《おしふ》せて、
「ええ、聒《やかまし》い! 貫一《かんいち》さんは其処《そこ》に一人居たら沢山ではありませんか。貴方より私が間さんには言ふ事が有るのですから、少し静にして聴いてお在《いで》なさい。
 間さん、私想ふのですね、究竟《つまり》かう云ふ女が貴方に腐れ付いてゐればこそ、どんなに申しても私の言《こと》は取上げては下さらんので御座いませう。貴方はそんなに未練がお有り遊ばしても、元この女は貴方を棄てて、余所《よそ》へ嫁に入つて了《しま》つたやうな、実に畜生にも劣つた薄情者なのでは御座いませんか。――私善く存じてゐますわ。貴方も余《あんま》り男らしくなくてお在《いで》なさる。それは如何《いか》にお可愛《かはい》いのか存じませんけれど、一旦|愛相《あいそ》を尽《つか》して迯《に》げて行つた女を、いつまでも思込んで遅々《ぐづぐづ》してゐらつしやるとは、まあ何たる不見識な事でせう! 貴方はそれでも男子ですか。私ならこんな女は一息に刺殺《さしころ》して了《しま》ふのです」
 宮
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