で御座いますのね、私敬服して、了ひました。失礼ながら貴方のお腕前に驚きましたので御座います。ああ云つた美婦人を御娯《おたのしみ》にお持ち遊ばしてゐながら、世間へは偏人だ事の、一国者《いつこくもの》だ事のと、その方へ掛けては実に奇麗なお顔を遊ばして、今日の今朝まで何年が間と云ふもの秘隠《ひしかくし》に隠し通してゐらしつたお手際《てぎは》には私実に驚入つて一言《いちごん》も御座いません。能く凄《すご》いとか何とか申しますが、貴方のやうなお方の事をさう申すので御座いませう」
「もうつまらん事を……、貴方何ですか」
「お口ぢやさう有仰《おつしや》つても、実はお嬉《うれし》いので御座いませう。あれ、ああしちや考へてゐらつしやる! そんなにも恋《こひし》くてゐらつしやるのですかね」
されば我が出行《いでゆ》きし迹《あと》をこそ案ぜしに、果してかかる※[#「※」は「薛/子」、370−1]《わざはひ》は出で来にけり。由無《よしな》き者の目には触れけるよ、と貫一はいと苦く心跼《こころくぐま》りつつ、物言ふも憂き唇を閉ぢて、唯月に打向へるを、女は此方《こなた》より熟々《つくづく》と見透《みすか》して目も
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