やから、君は君として怨《うらみ》を釈《と》いて可からうと思ふ。君がその怨を釈いたなら、昔の間に復《かへ》るべきぢやらうと考へるのじや。
君は今のところ慰められてをらん、それで又、何日《いつ》慰めらるるとも解らんと言うたな、然しじや、彼が悔悟してからにその様に思うてをると聞いたら、君はそれを以つて大いに慰められはせんかな。君がこの幾年間に得た金銭《マネエ》、それは幾多《いくら》か知らんけれど、その寡《すくな》からん金銭《マネエ》よりは、彼が終《つひ》に悔悟したと聞いた一言《いちごん》の方が、遙《はるか》に大いなる力を以つて君の心を慰むるであらうと思ふのじやが、どうか」
「それは僕が慰められるよりは、宮が苦まなければならん為の悔悟だらう。宮が前非を悟つた為に、僕が失つた者を再び得られる訳ぢやない、さうして見れば、僕の今日《こんにち》はそれに因《よ》つて少《すこし》も慰められるところは無いのだ。憎いことは彼は飽くまで憎い、が、その憎さに僕が慰められずにゐるのではないからして、宮その者の一身に向つて、僕は棄てられた怨を報いやうなどとは決して思つてをらん、畜生に讐《あだ》を復《かへ》す価は無い
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