を懺悔《ざんげ》したらんやうに、多少の涼きを覚ゆるなりき。
「そんなに言ふのなら、還《かへ》つて阿父さんに話をして見やうけれど、何もその所為《せゐ》で体が弱くなると云ふ訳も無かりさうなものぢやないか」
「いいえ、全くその所為よ。始終そればかり苦になつて、時々考込むと、実に耐《たま》らない心持になることがあるんですもの、この間逢ふ前まではそんなでもなかつたのだけれど、あれから急に――さうね、何と謂《い》つたら可いのだらう――私があんなに不仕合《ふしあはせ》な身分にして了《しま》つたとさう思つて、さぞ恨んでゐるだらうと、気の毒のやうな、可恐《おそろし》いやうな、さうして、何と無く私は悲くてね。外《ほか》には何も望は無いから、どうかあの人だけは元のやうにして、あの優い気立で、末始終阿父さんや阿母さんの世話をして貰つたら、どんなに嬉《うれし》からうと、そんな事ばかり考へては鬱《ふさ》いでゐるのです。いづれ私からも阿父さんに話をしますけれど、差当《さしあたり》阿母さんから好くこの訳をさう言つて、本当に頼んで下さいな。私二三日の内に行きますから」
されども母は投首《なげくび》して、
「私の考量《
前へ
次へ
全708ページ中331ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング