が思は幾計《いかばかり》なりけんよ。饑《う》ゑたる者の貪《むさぼ》り食《くら》ふらんやうに、彼はその一目にして四年《よとせ》の求むるところを求めんとしたり。※[#「※」は「厭/食」、214−15]《あ》かず、※[#「※」は「厭/食」、読みは「あ」、214−15]かず、彼の慾はこの日より益急になりて、既に自ら心事の不徳を以つて許せる身を投じて、唯快く万事を一事に換へて已《や》まん、と深くも念じたり。
 五番町なる鰐淵《わにぶち》といふ方《かた》に住める由は、静緒《しずお》より聞きつれど、むざとは文《ふみ》も通はせ難く、道は遠からねど、独《ひと》り出でて彷徨《さまよ》ふべき身にもあらぬなど、克《かな》はぬ事のみなるに苦《くるし》かりけれど、安否を分《わ》かざりし幾年《いくとせ》の思に較《くら》ぶれば、はや嚢《ふくろ》の物を捜《さぐ》るに等しかるをと、その一筋に慰められつつも彼は日毎の徒然《つれづれ》を憂きに堪へざる余《あまり》、我心を遺《のこ》る方《かた》無く明すべき長き長き文を書かんと思立ちぬ。そは折を得て送らんとにもあらず、又逢うては言ふ能はざるを言はしめんとにもあらで、止《た》だかく
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