ん》ど憎むべきまでに得意の頤《おとがひ》を撫《な》づるなりき。彼が一段の得意は、二箇月の後最愛の妻は妊《みごも》りて、翌年の春美き男子《なんし》を挙げぬ。宮は我とも覚えず浅ましがりて、産後を三月ばかり重く病みけるが、その癒《い》ゆる日を竣《ま》たで、初子《うひご》はいと弱くて肺炎の為に歿《みまか》りにけり。
子を生みし後も宮が色香はつゆ移《うつろ》はずして、自《おのづか》ら可悩《なやまし》き風情《ふぜい》の添《そは》りたるに、夫《つま》が愛護の念は益《ますます》深く、寵《ちよう》は人目の見苦《みぐるし》きばかり弥《いよい》よ加《くはは》るのみ。彼はその妻の常に楽《たのし》まざる故《ゆゑ》を毫《つゆ》も暁《さと》らず、始より唯その色を見て、打沈《うちしづ》みたる生得《うまれ》と独合点《ひとりがてん》して多く問はざるなりけり。
かく怜《いとし》まれつつも宮が初一念は動かんともせで、難有《ありがた》き人の情《なさけ》に負《そむ》きて、ここに嫁《とつ》ぎし罪をさへ歎きて止まざりしに、思はぬ子まで成せし過《あやまち》は如何《いか》にすべきと、躬《みづか》らその容《ゆる》し難きを慙《は》ぢて、
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