何だか酷く心持が悪くてなりませんから、今日はこれで還して下さいまし。これは長座《ちようざ》をいたしてお邪魔でございました。それでは遊佐さん、いづれ二三日の内に又上つてお話を願ひます」
 忽《たちま》ち打つて変りし貫一の様子に蒲田は冷笑《あざわらひ》して、
「間、貴様は犬の糞《くそ》で仇《かたき》を取らうと思つてゐるな。遣つて見ろ、そんな場合には自今《これから》毎《いつ》でも蒲田が現れて取挫《とりひし》いで遣るから」
「間も男なら犬の糞ぢや仇《かたき》は取らない」
「利《き》いた風なことを言ふな」
風「これさ、もう好加減にしないかい。間も帰り給へ。近日是非篤と話をしたいから、何事もその節だ。さあ、僕が其処《そこ》まで送らう」
 遊佐と風早とは起ちて彼を送出《おくりいだ》せり。主《あるじ》の妻は縁側より入《い》り来《きた》りぬ。
「まあ、貴方《あなた》、お蔭様で難有《ありがた》う存じました。もうもうどんなに好い心持でございましたらう」
「や、これは。些《ちよつ》と壮士《そうし》芝居といふところを」
「大相|宜《よろし》い幕でございましたこと。お酌を致しませう」
 件《くだん》の騒動にて四辺
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