求めざるべからざる微恙《びよう》を得ることあり。
朗《ほがらか》に秋の気澄みて、空の色、雲の布置《ただずまひ》匂《にほ》はしう、金色《きんしよく》の日影は豊に快晴を飾れる南受《みなみうけ》の縁障子を隙《すか》して、爽《さはやか》なる肌寒《はださむ》の蓐《とこ》に長高《たけたか》く痩《や》せたる貫一は横《よこた》はれり。蒼《あを》く濁《にご》れる頬《ほほ》の肉よ、※[#「※」は「骨+堯」、114−6]《さらば》へる横顔の輪廓《りんかく》よ、曇の懸れる眉《まゆ》の下に物思はしき眼色《めざし》の凝りて動かざりしが、やがて崩《くづ》るるやうに頬杖《ほほづゑ》を倒して、枕嚢《くくりまくら》に重き頭《かしら》を落すとともに寝返りつつ掻巻《かいまき》引寄せて、拡げたりし新聞を取りけるが、見る間もあらず投遣《なげや》りて仰向になりぬ。折しも誰《たれ》ならん、階子《はしご》を昇来《のぼりく》る音す。貫一は凝然として目を塞《ふた》ぎゐたり。紙門《ふすま》を啓《あ》けて入来《いりきた》れるは主《あるじ》の妻なり。貫一の慌《あわ》てて起上るを、そのままにと制して、机の傍《かたはら》に坐りつ。
「紅茶を淹《い
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