ていますね。」
夜が来て、深い闇が空気を埋めた。
「あしたになって太陽がまた昇ったら、どんなに好いでしょうな。私は、まあ友達などの言うところに依りますと、お前さんも知っている筈の、名の売れた彫刻家です。わたしは創作をします。そうです、まだ実行にまでは行きませんが、私には太陽が要るのです。そうして、その日光を得られれば、私には冷たい大理石に生命をあたえ、響きある青銅を輝く温かい火で鎔《とか》すことが出来るのです。――やあ、お前さんの手がわたしに触れましたね。」
「お出でなさい。あなたは私のお客です。」と、ラザルスは言った。
二人は帰路についた。そうして、長い夜は地球を掩い包んだ。
朝になって、もう太陽が高く昇っているのに、主人のアウレリウスが帰って来ないので、奴隷は主人を捜しに行った。彼は主人とラザルスをそれからそれへと尋ねあるいて、最後に燬《や》くが如くにまばゆい日光を正面に受けながら、二人が黙って坐ったままで、上の方を眺めているのを発見した。奴隷は泣き出して叫んだ。
「旦那さま、あなたはどうなすってしまったのです、旦那さま。」
その日に、アウレリウスはローマへ帰るべく出発した
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