ますと、庭の中が黒こげになっていて、長者は姿も見えませんでした。
 雷《らい》の神は、庭の高い大きな木に落ちるひまもなく、じかに金の日の丸の上に落ちかかったのでした。そして、その扇《おうぎ》を持ってた長者《ちょうじゃ》は、雷の神に打たれ焼かれて、雷の神が落ちるはずみに地面に出来た大きな穴の底に、ただ黒こげの骨だけとなって横たわっていました。
 それで、その時もやはり、雷の神が落ちて出来る穴の中に、雷の神と一緒に落ちるという不思議な白い珠《たま》を、誰も眼に見た者がなかったそうです。



底本:「豊島与志雄童話集」海鳥社
   1990(平成2)年11月27日第1刷発行
入力:kompass
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年4月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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