ってしまってる、けれど、あなたは若い、自由な広い生涯が前に開けている、そのあなたを私の固まってる生活の中に入れるには忍びない、忍びないだけじゃなくて、出来ないのだ……そして……まだあったけれど、私よく覚えていないの。」彼女の言葉は次第に早くなっていった。「ええ、そうよ、まだいろんなことを仰言ったけれど……私はもう固った生活を守ってゆけるとか、あなたは一つの型の中にはいるのは嘘だとか……そんなことを……私よく覚えていないけれど、それを私、幾日も考え通したのよ。そして宮原さんの仰言ることが本当だと感じたの。理屈じゃ分らないけれど、ただそう胸の底に感じたの。そしてどんなに泣いたか知れないわ。私本当は、宮原さんを愛してたの。宮原さんも、私を愛して下すったの。愛してるから一緒になれないんだって……。私が泣くと、沢山泣く方がいいって……。それで私、泣いて泣いて泣いてやったわ。自分でどうしていいか分らないんですもの。そして、構うことはないから捨鉢になったのよ、自由に飛び廻ってやれって気になって。けれど、宮原さんがいらっしゃることは、私にとっては力だったわ。私一生懸命に勉強するつもりになったのよ。」
「それじゃやはり、心から愛していたんだね。」
「ええ、心から愛していたわ。宮原さんも、心から私を愛して下すったの。」
「では結婚するのが本当だったんだ。結婚したからって、君が全く縛られるわけじゃないんだから。」
「縛られやしないけれど、私は、もっと自由にしていなけりゃいけないんですって。大きな二人の子供の世話なんか私には出来やしないんですって……。私の世界は宮原さんの世界と違うんですって……。だから、愛し合うだけで十分だったのよ。」
「そのうちに年を取ってしまうじゃないか。」
「ええ、年を取ってしまうわ。それまでの間のつもりだったわ。」
「年を取ってからは?」
「年を取ってからは……結婚するつもりだったのよ。それが本当だわ。もっともっと、いろんなことをしてから、勉強をしてから、そして世の中に……何だかよく分らないけれど、私が落着いてから……とそう思ったのよ。」
 その時、二人は突然口を噤んでしまった。そして驚いたように眼を見合った。はっきりしてきた。過去として話していたことが、実は現在のことだったのである。昌作は彼女の眼の中にそれを明かに読み取った。彼女は顔の色を変えた。物に慴えたよう
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