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立てるつもりの計画が少しも立たなかったのは、彼の受動的な無気力な性質のせいでもあったが、更になお頭痛のせいだった。二三日来の心の激動と前夜の馴れぬ葡萄酒の宿酔とのために、頭が恐ろしく硬ばって痛んで、何一つはっきりと考えることが出来なかった。頭脳の機関全体が調子を狂わして、ぱったり止って動かない部分と眩《めまぐる》しく回転する部分とがあった。それで彼は前述のようなことを、秩序立てて考えたのではなくて、一緒くたにまた断片的に考えたのだった。凡てが夢のようであると共に、部分々々が生のまま浮き上って入り乱れていた。
膝の上に眠ってしまった猫を投り出して、それが、伸びをして欠伸《あくび》をして、没表情な顔で振返って、またのっそり炬燵の上に這い上ってくるのを、彼はぼんやり見守りながら、いつまでも考え込んだ。頭痛のために昼食もよく喉へ通らなかった。戸外の霧がはれて、薄い西日が障子にさしてきてからも、彼はなお身を動かさなかった。
二時頃、柳容堂から電話がかかってきた。それでも彼の心はまだ夢想から醒めきらなかった。ぼんやり電話口に立つと、沢子の声がした。
「あなた佐伯さん? ……私沢子よ。……何していらっしゃるの?」
「何にもしていない。」
「じゃあ、一寸来て下さらない? 話があるから。今すぐに。」
「今すぐ?」
「ええ。晩は他に客があるとお話が出来ないから、今すぐ。お待ちしててよくって?」
昌作は一寸考えてみた。がその時、彼は急に頭が澄み切って、我知らず飛び上った。沢子の許へ駈けつけてゆくという一筋の途が、はっきり見えてきた。彼は怒鳴るようにして云った。
「すぐに行くよ。」
そして沢子の返辞をも待たないで、彼は電話室から飛出して、大急ぎで出かけていった。
けれど、柳容堂へ行くまでのうちに、訳の分らない恐れが彼の心のうちに萠した。何かに駆り立てられてるような自分自身を恐れたのか、或はこの大事な時にひどく頭がぼんやりしてるのを恐れたのか、或は一切を失うかも知れないことを恐れたのか、或は一切を得るかも知れないことを恐れたのか、或は取り返しのつかないことになりはしないかを恐れたのか、何れとも分らなかったが、多分それらの凡てだろう。恋してる女の所へ行くというような喜びは、少しも感じられなかった。そして彼は非常に陰惨な気持になり、次には捨鉢な気持になり、それから、何でも期待し得
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