した。それを見て、女王が眼に涙をいっぱいためながら抱きついて来ました。
「まあ、眼がさめましたか。それでも、昨夜《ゆうべ》から一体どこへ行っていました? 私達はどんなに心配しましたでしょう! よく帰って来てくれましたね。でも、黙って帰って来て寝てしまうなんて! どうしたのです? まあ、あなたはまだどうかしてはいませんか」
 母の女王の言うことが、王子にはさっぱり訳がわかりませんでした。それでなおよく聞いてみますと、実はこうだったのです。――昨日の夜中に、寝床の中に寝ていたはずの王子が、ふいにいなくなってしまいました。たった一人の王子がいなくなったのですから、城の中はひっくり返るような騒ぎになりました。城の隅々《すみずみ》はもちろんのこと、近くの野原や街に至るまで、家来《けらい》達が四方八方に手分けして、王子を探し廻りましたが、どうしても見つかりませんでした。夜が明けて、昼間になって、そしてまた夜になるまで、皆は王子を探し廻りましたが、何の手がかりもありませんでした。国王や女王は、悲しみの涙にくれて、泣き沈んでばかりいました。ところが夜になって、夜もふけてから、一人の侍女《じじょ》が、何
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