さえいる。――洋食の宴会に於ては、日本服が却って珍らしく目立つほどである。畳の上の座席に於ても、客を招待した当人が床柱を背にして着席するようなことが、やがて起るかも知れない。――若い女の結髪の様式は、服装の如何を問わず、既に世界的水準に従っている。
こういう現状であるから、或る特殊な気運とか必要とかのために、特定の服装や作法を立てることは甚だ容易であると共に、また偏狭な見解を排斥しなければならないだろう。そして肝要なのは、それが日常化されるか否かにある。――市内の防護団の服装は、漸くズボンだけでも日常に多少使用されてることは、或る点までの成功と見てよい。之に反して、国防婦人会の上被と襷とは、失敗と云って差支えない。防空演習の女のモンペイも、考慮すべき点が多いであろう。――イタリーやドイツの団服のことは茲では云わず、満洲の協和会の服装の成功を、考察すべきである。
O
さて、風俗時評其他風俗に関する言説の困難さを、私はつくづく感ずるのである。
風俗は形に現われたものである。思想や感情や生活態度の現象的表現である。だから眼で見て直ちに掴まえられるものではあるが、それが単
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