赤茶地に黒線の虎斑の、頸から腹や足先にかけて白い、尾の短い、普通の牝猫だったが、私たちはそのまま飼い続けた。
 二年ばかり後、私たちは他の家に移転した。四五町しか距っていない家だったので、猫が旧家に逃げ戻りはしないかと、飼えば愛情が出て、少々心配した。だが何のこともなかった。目隠しもせず、ただ抱いて来ただけで、繋ぎとめる必要もなく、私たちと一緒に、当然だという顔付で、新らしい家に落付いてしまった。家によりもより多く飼主に馴染んでいるのだ。
 其後この猫、年に一二回妊娠をするし、分娩の時の世話やら、生れた仔猫の貰われ口など、随分心配をかけるが、それだけにまた家庭生活の中に根を下して、すっかり家族の一員となってしまった。
 小学校に通う子供三人が、円陣を作って遊んでいると、猫はその真中にはいって蹲る。子供の一人が勉強を初めると、その机の上に坐りこむ。「猫が、お遊びの……勉強の……邪魔をする、」というのが子供たちの始終の苦情だ。そのくせ、寝る時には、各自に自分の布団の中へ猫を奪い合う。夏休みなど、家族中で旅をするような時、その不在中、猫がとても淋しそうだったと、留守居の者の話。旅から帰ってく
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