快く、だが頸筋が少し痛い。重荷を背負った後みたいだ。まさしく、何たる重荷だったことか。喜久子や中野みたいな重荷を荷う者こそ、災だ。
 だが、まだこの屋上から出てゆくには早朝すぎる。扉が締めきってあるだろう。飛び降りるようなばかな真似はしないことだ。深呼吸をし、全身の体操をし、そして日の出を待とう。



底本:「豊島与志雄著作集 第四巻(小説4[#「4」はローマ数字、1−13−24])」未来社
   1965(昭和40)年6月25日第1刷発行
初出:「光」
   1947(昭和22)年7月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2008年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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